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ここまでやるか
極め!ハリウッド裏方芸術

『Terminater』シリーズ(=JamesCameron監督)で用意された小道具の万全・周到ぶりを鑑る

いきなりCameronさんの作品でない大作『IndependenceDay』に登場したUFO。
母船UFOはあのLAの衛星都市まで覆うほどの圧倒的大きさ(笑)だった。
したがって制作側も母船は、「精巧な下面」の部分づくりのプロップ。それと宇宙基地から
発進してくる遠目の『ウンと小さい』プロップだけ。いずれにせよ、この米軍F-16と空中戦を繰り広げる写真左の「ファイター」との露出度比較ではこちらの機体に軍配が上がる。
したがって、コレクションするならこちらである。母船の「個体数が少ない」のは価値があるじゃないかとツッコまれても、よっぽどレプリカなみに乱発されない限り『価値があるのは映画のイコールイメージ(象徴的)』となったキャラやプロップなのである。昨今の日本人ネットバイヤー諸氏はこの辺が直情的に買っているのではないかと思う。もったいない。
左上のUFOはグラスファイバー製(直径1,5M)で中は中空。飛行中テールから噴射される蒼い推進ガスは覗く”メカ部込みのCG”。『レプリカ』の作られにくい突起物の複雑さ…等の点が気に入った。
左:『T2 JudgementDay』ラストシーン。偉大なるJamesCameron監督(エイリアン、タイタニック、トゥルーライズ、ターミネイター)がいなかったらシュワちゃん…って、かなり現在まで積みあがった印象とは違うんじゃないか。彼の指揮下に入るSVE(SpecialVisualEffects)特殊視覚効果は徹底的にその時代のベストばかりで構成されてきた。80年代半ば(84・ターミネイター)から、常にハリウッドの制作者の目標となってきた。氏のスタッフは、『実物大のプロップ』をまず作製し、それを『360全角度の撮影をしてコンピュータに取り込む』それを適当な擬音や光沢を与えて自由に動かす手法だった。
この品は『T2』の撮影のために用意されたもの。材質はポリ樹脂が90%以上を占める。意外かもしれないが金属部分はせいぜいが接続部分だけなのは、近年の俳優組合がこうしたプロップなどによる事故には莫大な賠償請求を行う…そのため、金属が使えず、プロップのアーティストらは『ポリ樹脂』や『いかにも金属・いかにも汚しペイント』の技術が格段に進歩した。
左上のラストシーンでは良く見るとシュワちゃんの左肩が不自然である。それはこ・こいつが左肩に仕込まれていたから(うわ〜〜そいつは知らなかった)だ。
下の写真の方が良く判るが「肩部」からストラップが伸びている。これを私服刑事のホルスターのように肩にかけ固定。ロボアームは衣裳の皮コートに通す。”不要”になった左腕はテープで固定してしまう。実際のシーンの袖には「ロボットが手首をもがれた」わけだからケーブルなどを貼り付けてぶる下げておく…寸法だ。そんじゃ、ヒジや二の腕の部分の「黒いパッド」はなんだろう…というと、右腕のムキムキぶりとの見かけのバランスを取ろうと『太く見せるため』に巻かれたのである。
……で、そのパッドを外してみた。
せっかくの『90年代ハリウッド芸術品』の匠の技を見ておかねばならないからだ。
びっくりした。これがJamesCameronの仕事なのか、感動した。
ターミネイターの幾つかのシーンでは、「シュワちゃんのロボット部分」その『実物大サイズのプロップ』はほとんどなかった。92年頃からボクは徹底マークでこの『Cameron&シュワちゃんSVE』ものは将来にわたる財宝として捉えて探しまくって来た。アメリカ人たちでそうした自分たちの文化遺産に気付くライバルはしばらく現れなかったのもラッキー。
 結果、ターミネーター第一作クライマックスのa)『這って追いかけてくる腕』、それに『T2』での『LASWAT一斉射撃で人工皮膚がはがれてロボ部分とシュワちゃん顔”半々”』(笑)という、b)「人工シュワちゃん首から上」、それにこの品だった。
b)は、「一斉射撃が始まった途端のもの」そして「かなり命中弾を食らった後のもの」と2種類が使用されたが、ボクの所蔵ではない「前者」の方がデキが良く…て、ボクのはタマを喰っている分、比較的”手抜きのデキ”(笑)だ。
パッドを外した全体像。
いずれにせよ、リッパだなあと感心するのは『どうせパッドを巻くのなら』、それこそ新聞紙でも丸めて袖に突っ込んでおけばいいのであって、こんな”人間芸術”を隠して使用する…なんて考えられない。
あのラストシーンは、かなり早い順序で撮影され、必ずしもオーラスで収められたシーンではなかったが、おそらくこの腕を露出しての修羅場とか、このシーンでも溶鉱炉に自らの身体を沈めて自死してゆくシュワちゃん、そのコートが焼け落ち、このメカものぞきながら真っ赤な鉄の中に消えて行く…といったシナリオでも「用意されていたのではないか?」と、この持ち主であったなら、これを手に取ると思わず夢が頭の中を巡ってしまうのだ。
あの複雑な指一本一本が動き回る『有名な手首』を失った腕の先。
いかにも各部分がギコギコいって動きそうだが、あいにく可動しないことに(今まで全員の)人が驚く。それに柔らかい手触り…にはウッソ〜と声が上がる。

それほどに天才的アーティストや湯水のような制作費によって作られたこれらのプロップは、そうした『色・汚れ・質感・構造的面白さ』に満ちている。
これが、さらにコンピュータ処理によってもっと金属らしく、肝心なメカ音との合体で「いかにも」ズッシリとした重みまで観客に感じさせてしまう魔術。(音は決め手とも云って良い)
Cameronさんはそれでも『原寸大』のプロップにこだわった方であったが、ハリウッドの現実問題としてCGの進歩、経費的な問題もあって、今や『ミニチュア』サイズのプロップ。いや、『コンピュータの中で描いてしまえば』間に合ってしまう…のだから、名だたるアーティスト(特殊メイクさんだって同様)や制作プロも看板を下ろしてしまっている(90年代後半〜現在)。
さすがのアメリカ市場も、今となっては進出著しいけれどなんだか『XXっていう映画のOOっていう設定の中でAAというのが使ってた**』、そんな物は避けるのが正解。
『説明に時間を要す品』はヒトを動かさない。
『うわっ、コレってアレじゃない?!』手に入るうちにこうした品を手に入れたいものですね。
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