こだわりの旅 『イチロー”首位打者”          への周到準備』

無言のままキャンプへ

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日本での「調整」を終え、勇躍イチローはアメリカに向かった。
番記者らには何の責任もないが、神戸での練習を”通常どおり”のトレーニング…と各社は報じており、そこにあった「大リーグボール」やバットの"木質への相性”チェックまでが同時進行しているなど丸っきりのノーマークで新妻の弓子さんと二人、離日していった。

アリゾナ州ピオリア、現地での携帯電話に出たイチローの声は明るかった。
『そちら時間の明日、ピオリアのどこで待ち合わせしましょうか…』
アメリカ大陸のど真ん中と、東京の下町を結んだ会話である。
21世紀とはこうした時代なのか。

早朝にはラスヴェガスに到着、国内便に乗り換えてアリゾナ・フェニックスに入る。

本当ならLA着がいいのだろうが、あの空港はあまりに遠方からの旅客を長々と待たせすぎる。
やはり南アメリカやアジア、メキシコから入国する便が多いため、外国人向け"移民検査"や不審者チェックが入管当局が手間取るためなのである。

アメリカ合衆国、第二の玄関口にしてはあまりにその点が改善されていない。
だから西海岸でもっとも?スムースに外へ出られるヴェガスに勝る直行便はない…のだが、今後は日本航空一社のみの乗り入れとなるらしく、ホントに残念である。

だが、アリゾナまでの国内便がいただけない。”新しいエアラインの形”と呼ばれる『サウスウェストAir』である。アリゾナまでの便では『アメリカウェスト』もあるのだが、ここがインターネット経由での予約券売にナント「日本国内で発行されたクレジッドカードは”使わせない”」ため、仕方なく前者を使うのだ。

意外に思われるかもしれないが、日本の「銀行系」「信販系」はては「なんとかエクスプレス」のような”外資系カード”に至るまで、このアメリカではいきなり”日本発行”との理由でここ1〜2年というもの、(対面販売はともかく)断られてしまったり、外地で孤立無援、思わぬピンチに立たされることがある。

あのハワイでLAで、日本のクレジットカードを使って電話一本もかけられないのである。
あまりのことなので、ボクは交換手経由でエライ人を呼び出して事情を訊くと、
『日本製カードを使い、ここのところアジア向けなどに超長電話の通話料金を踏み倒す…などのサギ犯が横行しているからのやむを得ぬ措置』なのだそうだ。

だからやむを得ず、仕事先にコレクトコールという”バカ高い失礼な受け取り人払い”でいったんかけ、かけなおしてもらうという非常手段で打ち合わせしなければならないトラブルがあった。

この日常気付かない、わが愛用カードの意外な事実(非力ぶり?)をどれだけの方がご存知だろうか?
『出かける時は忘れずに…』持っていったはいいが、使えないと言うのでは涙も出ない。
余談だが、世界最強のカードとは『MASTER CARD』と(提携し、)プリントされているカードであって、消去法的に”これが使えずに、他が使える…”といった事例は今までなかった。

とにかく、予約も何もない。”早い者勝ち”先並び先搭乗…が原則でまるで定期バスと同じである。とにかくこのキャリアーを選んでいる限り、とにかく空港へ駆け付けなければならない。

早朝ヴェガスに入り、乗り換えてレンタカーを借りてキャンプに着く頃には、イチローはとっくに練習から上がり、クールダウン課程に入っているのである。
驚いたことに彼が指定した待ち合わせ場所、それは広大な住宅街の中に作られたゴルフコースのクラブハウス(といってもトレーラーハウス)であった。

『もう90切る時もありますよ(笑)』イチローは笑う。
4大メジャースポーツのキャンプというものは、こうして一日の時間をかっちりと分けて、練習メニューかっちり。ゴルフや水泳などのクールダウンかっちり…とメリハリを持たせている。

おそらく日本球団のキャンプでイチローのような若者がこうして午後いっぱいをゴルフに当てている…となったらマスコミや親会社がタダでは済まないだろう、そのせいだろうか、また報道協定が結ばれていたか、キャンプ中にこうして「イチローがゴルフをしている」と、一行も報じた社はなかったはずだ。

その結果、こうして『首位打者も盗塁王も獲れた』のだから、あいも変わらずの『千本ノック』だの『終日特訓』のような”ズルズルキャンプ”は世界のどこでも、日本を除き、もう過去のものとなっている。そろそろ日本球団も考えて良いはずである。

やわらかな風がゆっくりただよう、アリゾナ州フェニックス郊外。
イチローはキャンプで「午前中、筋肉を増強しながら、午後はこうしてたっぷりと筋肉をクールダウン」しつつ、1日、1日確実に先鋭なマシンになって行くのであった。

だが、翌日のマリナーズキャンプ施設でイチローが多くの注目を集め開始した打撃練習に、ボクは度肝を抜かれた…

『な・なんなんだ…あのスィングは?』
いったい、ナニがあったというのだろうかぁ〜〜〜〜〜(『ガチンコ』垂木 勉ナレーター氏風)(笑)

つづく