江頭氏はなかなか”GO”サインを出さなかった。

試作第一号はそれから3ヶ月後にやってきた。
オイルを深くなじませた本体は「しっとりと、そしてズシリ」とした存在感に満ちたものであった。

この時点ではすでにボクの口から熱狂的草野球人や、国体を狙うチーム選手などに洩らされていたため、早くもこの「軟式革命」のコンセプトに待ちかね、熱視線を注いでくれている人々がいた。

出来あがり次第、そうした理解者諸兄や小社関係者に、試作レベルの品をモニター的に無作為に手渡してゆく。
彼らからは、”後日、意見を求めるつもり”でいたら、驚いたことにお届けしたお客様の側から、一足先にレスポンスが次々と舞い込んでくるのであった。

「モニターからの反応」にボクらはしびれた。感動した!

『このグラブなんですか?!すっごく使いいいんですよ。・・・そうなんですか”プロ”ってこんなの使っているんですねェ、いいなあ。電話したのはまた違うタイプを、もう一個送って欲しいもんですから…』

『「チームの備品」のつもりで買ったキャッチャーミットを、練習でジブンがあまりに獲りごこちがいいんでタマを受けていたら評判がよくて、結局、捕手にコンバートされそうになっています(笑)』(開発続行中 '03当時。「キャッチャーミット」は無期延期)

『コレって前野さんが言っていたようにホントに「おろしたその日にゲッツーを」しかも”2つも獲れた”んですよ〜。手のひらへの吸い付き感が素晴らしく良いんで、ホントに手のひらを拡大してもらえた…ってカンジですね』

『”硬球でキャッチボールする感覚”って、軟式始めてからずっと絶対味わえなかった。でもこれは「軟球」で”グラブの芯と芯とで”バシバシ相手のエネルギーをモロ感じられるんですよ。こんなのって、絶対なかったッスよ〜。コレ最高〜。

…等など、わずか”数個のテスト品”が産んだ反響の第一号は、目があらためて醒めるほどインパクトの強いものだった。
それは”試作品”などではなく、とっくに完成品の領域に到達した物だった。
《まだ模索段階なんで…》と口では照れていた江頭の製品に”憑依させた”執念と情熱の強さに、あらためて、言葉を失った。

そんな販売側の(有)流体力学や顧客らはすでに目を輝かせ、送られてきた第二号にも瞠目していた。

それらは明らかに従来の《硬式&軟式グラブ》の世界には明らかに存在しなかった、軟式ボールへのしっとりとしたネバリのあるやさしいフィット感を持つものであった。
これなら、従来の軟式グラブ用の革(=牛の腹側)ではとても味わえないボールの吸着感が判ってもらえるはずだ。

が一方の江頭は、その時点では全く満足していなかったらしい(ので困った)。(笑)

「まだまだ”先”をやらして下さい」と、”理想”の追求続ける江頭。前野は「………」(苦笑)

以降、三次にわたる試作とテスト販売を経て、約一年後、どうやら最終型で江頭が「”決定”([生産開始」をしてくれる運びとなったようだ。

そして02年4月、江頭が『自分のもの』として前野との共同作品としての《A’heads》の出荷を開始した。
自分が直接手を下したグラブ、軟式用に配慮したグラブである……との自己差別化をしたいと、江頭からの強い要望を受けて、ベースである(江頭氏自身の設計でもある)久保田スラッガー製であるラベルをあえて否定して、《独自のラベルを貼らせてもらう》との要請を受け、それを尊重した。

最終型で目立つのは「土手」部分の裏表へのパンチングの穴だろう。
これでグラブ内部の空気を抜きこの部分で《軟球が弾もうとした際》に反発力を抜きたい・・・からエアホールを開けたのだと江頭は言う。

このアイディアはそもそも《辻初彦》が、”土手”の内側にある空気が邪魔をしてボールが弾んだら困るから……と、この部分に【エア抜きの穴】を空けていわば”破れ太鼓”にしてみたらとの発案から生まれたもの。

それをより、土手と「軟球」とダブルで弾みやすいファクターを前に、この【辻ホール】を数多く空けて対応することになり、それは実際に、きわめて実戦的な好結果をもたらしている。
このエアホールが、突進してきた”ゴムマリ”の弾みを、極限まで落としてくれる…のは誰の目にも明らかだろう。 エアホールは内側にも、設けられており、
「手のひら」側の弾力対策にも貢献している

辻内野用¥27000
これでエラーしたら
「後がない」?(笑)

仕上がった品を一点ずつ"GodHand"が分解し叩き、送り出す…だから限定

『この”軟式革命”のグラブの注文があまり来るようになったら、ワタシはちょっと時間を食われるから困るんだけど…、だけど反響がないのはもっとイヤだなあ…(笑)』
と”手間のかかる”グラブを産み出して、悲喜こもごも…といった最近の江頭の弁である。

なにしろ、この《ゴッドハンド》はせっかく組み立てられてきたA’headのグラブの皮ひもを抜き、お腹を広げ、内側の”内臓”に仕込まれた『無表情なアンコやパッド』たちを”叩き、角張った部分に丸みを出して”動きを滑らかにする…XXそしてXX…新しくできた”角度”に適わせ叩き、皮ひもで閉じる。

*面白いのは届いたグラブを見ても「どこをいじったんだろう」と???『じっと手を見る…』(笑)なのだが、(最近では少なくなった)
コンクリートの壁などに向かい(橋げた等)ほんの20球も気合を入れて連続的に『自分の捕球するスィートスポット』で獲ってはなげすぐに捕球する…というホットな動作をこなす

 フォーストミットならまず驚くのは、ショートバウンドに対し『”引く”のではなく、むしろわずか前方にぶつけてやるつもり』で差し出していると、しっかり収まって、ボールがあの軟球が大人しくこちらを待っている…おいおい、こんなにいいコだったっけ(笑)。
 試合だったら相手ベンチから『まぐれまぐれ…』と”逆褒め”される「現象」が、【差し出し方ひとつ】で江頭マジックが出現する。

 オールラウンド用なら他のグラブを比較したらもうそれで終わりである。
 小石や、土の凹みなどボクらのグラウンドならでは(笑)の自然条件で打球が小さく変化しても、江頭の設定した手の平捕球面を尊重する…だけで、驚くほどにイレギュラーを制圧し、こともなげに打球を手なづける…のを実感する。

 先日などモニターを長くお願いしている某氏の外野守備を見学している…と、試合中、浅いライナーが氏をいや、オールラウンドモデルを襲った、前進してきた氏はこれをしっかりタッチアップに備えて送球側の手を添えて両手どり…。そしてボクは耳を疑った。
 『パッチ〜〜ン』ボクは長いこと軟式野球をみて来たが、これだけ見事な捕球音を耳にしたのは初めてだった。それはまるでキャッチャーの薄いミットのように乾いた高らかな音だった。

 チェンジ後、ベンチに意気揚々と引き揚げる氏は上気していた。
 『いやぁ〜、最高ですね。守備がたのしぃ〜』
 久々にグラブの手の平側を見せてもらった。しっかり”軟球の直径そのまま”にグラブの中央が円形に濃く沁みた「琥珀色」を出している。

 氏はこのグラブとツルんで以来、他社の「軟式」のようなウェブの付け根(親指と人差し指根元を結んだ線)側にあった「捕球点」が、この手の平側へとすっかり”拠点”を移していた。
 『ナルホドもんですよ。こうすることでギリギリの打球でも
ウェブなんてオマケでついている…ようなもの、だから想像よりもグラブが大きく使える。

 また、江頭はそうした”理解者のため”に、グラブ内側の広い範囲で打球を”大人しくさせる”いわば「3−D的」な角度で、中心部にブラブ全体が求心するよう考えている。

 息もたえだえになって(笑)の『壁ぶつけ』を終えて、手の平を眺めてみたら…

 左右に故意にボールを散らすよう、力をこめ投げ込み自分の”球威”を、”何割か減で”手の平に感じる。
 バシィ、バシィッ。一球一球しっかりボールを見てボクは、自分にとって「投球動作にもっとも早く入れるスィートスポット」にしっかりぶつけるようグラブを差し出す。
 わざと天の邪鬼のように上下左右に送球をふり、『別の角度からの打球』をもグラブに教え込むようにするわけだ。
 ほんの20球、息も上がりそう(笑)で小休止。
 アレ、なんだろう…。その捕球面に黒ずんだ沁みが浮かんでいる。
 先述のモニター氏のグラブの話を思い出して欲しい。

 そう、これも江頭が仕込んだ、江頭マジック。
 完成したグラブのお腹を切開し、手の平部分の内側に江頭は別あつらえの油脂を塗る。

 一定程度以上の温度にならないと、この油脂は頑固に姿を変えない。
 ところがボクのやった「試運転」のように、選手の手の平の温度が内側から上昇し、ひんぱんな捕球の度に油脂は揉まれて、ボールが”入力されてくる”のに都合の良いカタチ…へと、初めて姿を変え始めるのである。

 …先ほどまで”新品(?)”のグラブ手の平から、まるであぶり出しの文字が浮かび上がるように、頼りにしている捕球面にうっすらと、「仕込んだ油」と「自慢の革が」馴染み始めたシミが浮いて出てくる…、おぉ〜、松井稼頭夫や辻さんの愛用グラブなどに出ている『名手の証し』みたいなシミではないですか〜。

 こうなったら、もうこのシミが主役…である(笑)。
 ここを中心に獲るよう、自分が変わって行くのだろう、その後のキャッチボールでも、しっかり江頭の考えたコンセプトを尊重するよう「ソコで獲る」…「あ・しまった外した。もっと集中力を」と心に念じて投げ返す。


左:試作から前野が2年間使い続けた江頭製ミット。手のひら全体が使われていることが判る
中・右:最近仕様の新品、このポケットが【走者を塁に置いた場合】。
右がアウトひとつ確実取り切りの捕球ポケット位置・・・とツインポケット構造だ

 幾つものグラブの試作品、製品版をテストするうち、ボクは日増しに江頭の深謀遠慮…その重みを日々噛み締める。
 「もっと早く始めているべき事業だった」とつくづく思う。

 「F1の開発競争」が、市販車の安全性や機能を飛躍的に発展させたように、日本ならではのこの『軟球』といった特殊なボールをもっともっと、多くの業界人がプレイヤーの立場を思いやっていたら、とっくの昔にトンでもないカタチのグラブやバット、日本独自の『軟式野球グッズ』があふれていただろうに…。

 そして『対岸は無能?』だったのか…というと、とんでもない、世界に冠たる江頭のようなグラブ作家たちが日本にはいるというのに【宝の持ち腐れ】をしていたのだから本当に惜しい、ただそう思う。

 しかしはっきり云えること、それはいかに後発の『軟式革命モドキ』が表れようが、江頭の『プロオンリー』で鳴らした職人芸…を超えることなど、到底、時間的にも採算的にも不可能であるからだ。

 たしかにこんな前近代的な職人芸で、大量に販売するのは物理的に無理な相談だ。
 江頭の苦笑の訳がお解りいただける事だろう。

 前野はそうした『名人芸』を少しでも多くの心つなげられる人に理解して欲しい。それにそうした志の高い職人さんの仕事に潜む”思いやり”を経験して欲しいのだ。
 「顧客」とは”顧みた客”だからこその単語ではないか。

 軟式ボールにlこれだけの野球好きが日々没頭しているという現象を顧みず、
 その無配慮を指摘されてもプロとして顧みず、

 指摘を受け、それを【改めようとして生まれたボクらの提案】を前にして、顔を隠してお客の列に並び、グラブを受け取り、それを持ちかえって分解、昨今では恥知らずにも【この(つたない)ホームページ】の言葉まで盗んで商品タグなどにまで用い『手前の苦労』と詐称して販売を開始…しても人間としての”恥”、軟式プレーヤーへの”信義”など顧みない複数のメーカー諸氏。

 残念ながら我々は「弱小で零細」であるため、こうして読んでくれる皆さんという=証人を必要としてそれに支えてもらわないと踏みつぶされてしまうだろう。

 しかし、読んで頂いた
 《誰がホンモノで、どれがニセモノ》という【白黒的原点】だけは、はっきり認識しておいていただけるだろう。
 我々が倒れて消えてしまったのちには、それだけがせめて名誉を守れて、せめてボクらが頑張った証しを遺せる頼りなのである。

 パクリ専門…こうした輩にはきっちりと責任を取ってもらおう。それは”恥”をかいて頂くことである。

 そしてなにより「機能性・品質」において、間違ってもこんな輩どものねつ造品に、我がユニットが遅れをとるならば、【直ちに販売から手を引こう】、直ちに…である。

 なぜならそんなようでは我々自身が『クズ以下』となってしまうからである。

 顧客の皆さんにおかれましても、このことはお約束申し上げておきます。

 それにしても昨今の恥知らずぶりは、ここまで低級な連中であるなどとは、ボク自身が”顧みて”もみなかった次第…(笑)です。

ケッサクだった江頭氏の『グラブお手入れ法』…とは

『唾液、あるでしょ[ツバ]。あれでね、ちょくちょくツバをグラブに付けて手入れしてやって欲しいんですよ。アレはね、口の中ケガしたって、また動物がケガした場所を舐めてやって損傷を直すでしょ…ああいったチカラがあるわけで、グラブにはとってもいい。』等と”楽観的”だ。

もっとも、久保田スラッガーのカタログにも掲載のグラブオイルは江頭が直接選び抜いた(大げさだけど)逸品。
氏はそれをほとんど1本、ドンブリに空けてボロ布にしみ込ませ軽く絞る。
(残った油は再利用)
その布をZIPLOCKなどの密封パックに入れて冷暗所に保存。
「初期は柔らかくしたい部分中心に」
「使い込んだら、指先の”こすれそうな部分や皮ひも部分”を拭いてやる」

 主目的は”破けたり・すりむけたりしなければいい”のである。なあんだ。

 前野説『メジャー流』…とは 
ケングリフィーJr.などはもっぱらヒゲ剃り用のシェービングフォームで手入れする。あれには皮膚を整え、(革=)皮膚荒れを修復する(ラノリン等)成分が含まれ、グラブの周囲(特にヒモ、指先部)へ利用し主に乾燥しすぎに”潤いを与える程度でいい”と、過保護にならなくて良いから……と説明する。

 過保護にしたら良いことはない。
 砂はともかく、土や泥は落とさず「ツバや江頭のオイル」などと共にすり込んでやっていい。

  前野は、考える。
 江頭のオイルもいいが、人間の手のひらの荒れに使う[アトリックス・ハンドクリーム]が非常に良いように思う。
 これなら”年老いたグラブ”やバッティンググローブの(手入れ)だけでなく、《延命》にも有用だ。

 また、メジャーのロッカーでは【牛乳】も使われる。
 とくにこれは、【シットリ感】を持たせるのには簡単で有効な手立て。
 見たところでは「普通の牛乳」で、あっさりと湿らせる程度だが、凝る者は濃厚な牛乳を用いてさらにペタペタになるようにしてから拭き取る。(濃厚な牛乳=【乳脂肪分】が多いものの方がコンディショナーの代用にはなる。)

*雨の試合後:けして日なたで干さない。新聞紙を沢山使いあらゆる穴に突っ込み水分を背負わせ取り去る。そして日陰風通しの良い場所に放置。
「カビ」はある程度”出してやる”、あせらない事。
靴にも使う”汚れ落し(=クリーナー=コンディショナー)”で、カビなどはひと拭きで落ちる。
そのあとにアトリックスをすり込んで、ボールがヌルつかない程度で試合に備え放置する。

江頭・前野《A’heads》オリジナルグラブ《軟式革命》
軟式上級者内野手用(特にセカンド・ショート)new!
辻内野モデル
:ウェブ=格子状 ¥27000(税別)
江頭が、考案し【久保田だけの使用権を取った】新ウェブ【スケル】を装着し、小社では初夏以来出荷=販売をほぼ停止させながら、「旧球」「新球」とモニタリングテストを重ね、旧松井モデルをベースに、新球により対応した【モデル5-6】(ファイブシックス)を発売に踏み切りました。
【5は守備番号のサード、6は同じくショートストップを意味します。】
「軟式革命」専用グラブ袋付き¥29000
 カラー:ナチュラルのみ(少し明るい色に染まった革から良いネバリのものを見つけ[上写真]、この革で当面お届けします)

確実に”獲ってから…”を速くする

 外野用オールラウンドサイズ(プロ外野手サイズ)

オールラウンド
29000円
外野・投手用にさらに特化!
また荒れたグラウンドの内野用にも。

江頭が新案したこのフレキシブルなウェブもカタログ初登
場からもう20年になる。
ここに頼りがちなポジションや、新軟球では、打球を殺す威力は群を抜く

ベースは「久保田スラッガー」製グラブが土台。そこへプロもあこがれる『江頭じきじきの加工』を一個一個丹念に施した品だけにこの[Aheads]ラベルが付きます。

大きさの比較 左[5-6]。
右【オールラウンド】、キミのテリト
リーはさらに拡大する(”整地されて
いない内野”では思わぬ美技を提供
するはず)嬉しさ抑え「想定内だよ」と
いうイカにも顔をしましょう(笑)。

”サウスポー用”も充実各モデルにご用意

キャッチャースミットは試作・実験を続けております。

★お問い合わせ・お申し込み
(有)流体力学・旭堂
ph.03−3895−8463(12〜18時 毎火曜定休)
★116-0001東京都荒川区町屋2−2−3旭堂ビル

★お振込先は
ジャパンネットバンク本店営業部 *普通口座2288415 名義=マエノ ユウコ
      
*なお本パンフレットの文責はすべて私、前野 重雄に帰すものです。同時に今まで
長きにわたり、江頭氏の高い水準の製品作りを支えて来られたお得意先小売各社、ならびに同社
関係者に、深い敬意を申し上げたいと存じます。

本HP上で公開されている写真・記述などの無断盗用引用はお断りしています。ごめんなさい。